転職活動をする際、まず引っかるのがたくさんある雇用形態です。
正社員・契約社員・期間従業員・正規・非正規など、呼び名がいろいろあってよくわからないですよね。
その中でも、特によく目にするのものが、「正社員」と「契約社員」です。
違いがわからないまま転職してしまうと、想像と違っていた、こんなはずではなかったということになるかもしれません。
まずは、正社員と契約社員の違いを理解してから転職を考えましょう。
この記事では、以下のことについて解説していきます。
- そもそも正社員・契約社員とは?
- 正社員と契約社員の相違点
- 正社員と契約社員の共通点
- 契約社員から正社員になれるのか
ぜひ、参考にしてみてください。
そもそも正社員・契約社員とは?
正社員・契約社員という呼び名は、法律上の定義というものはなく、労働基準法ではどちらも「労働者」と呼ばれます。
正社員・契約社員は区別しやすくするため使われている名称なのです。
主な違いとしては、次のようなものがあります。
正社員 | 契約社員 | |
別称 | 正規社員・社員など | 非正規社員・準社員・期間従業員など |
雇用形態 | 直接雇用 | 直接雇用 |
雇用期間 | 定めなし | 定めあり
一定の条件(※無期転換ルール)を満たせば定めなし |
(※) 無期転換ルール(厚生労働省)
まずは、正社員と契約社員の主な違いについて理解しておきましょう。
正社員と契約社員の相違点
正社員と契約社員では、どのような違いがあるのかをご紹介していきます。
正社員 | 契約社員 | |
雇用期間 | 定めなし | 定めあり
一定の条件(無期転換ルール)を満たせばなし |
収入 | 安定 | 不安定 |
昇給・昇格 | あり | なし |
福利厚生 | あり | 制限あり |
スキルアップ | 可能 | 難しい |
転勤 | あり | なし |
社会的信用 | 高い | 低い |
【違いがあるもの】
雇用期間
正社員と契約社員の最も大きな違いは雇用期間です。
正社員は雇用期間の定めはなく、退職・解雇・定年のいずれかを除き雇用は継続されます。
契約社員の雇用期間は最長でも3年間ですが、無期転換ルール適用後は雇用期間の定めはなくなります。
契約社員は、例えば半年や1年など定められた期間で雇用契約し、契約更新があれば雇用継続となりますが、もし更新されなければ雇止めとなってしまうのです。
契約社員は雇用の継続を希望しても、契約が更新されるかどうかは企業次第です。
雇用期間の定めのない正社員とは違い、契約社員は契約終了となった時のことを考えて、貯蓄や転職の準備をしておく必要があります。
収入
正社員と契約社員との収入差は大きいです。
正社員の給与形態は月給制であることが多く、毎月の基本給はほぼ変わらず一定しています。
加えて、ボーナス・福利厚生費・退職金なども受け取れ、昇給・昇格の制度もあります。
一方で、契約社員は時給制が多く、連休などがあれば大幅な収入減となり安定していません。
コストカットにより、ボーナスはもらえない場合もあり、退職金はありません。
交通費などの福利厚生費も減額されています。昇給・昇格の機会もなく、収入増は期待できません。
給与形態の違いによる基本給の安定性や、手当などのコストカットが、正社員と契約社員の収入差を拡大させているのです。
昇給・昇格
正社員に比べ、契約社員は昇給・昇格によって収入増になる可能性は低いです。
正社員には昇給・昇格の制度がありますが、契約社員は給与・役職が契約時に定められているからです。
正社員は勤続年数・仕事内容・成果によって、昇給・昇格の見直しが定期的に行われますので、みながずっと同じ賃金・立場ということはまずないでしょう。
契約社員は、たとえ成果を上げたとしても、雇用期間終了まで契約時の給与や役職が変更されることはありません。
変更があるとすれば、雇用契約更新の時となりますが、更新後も変わらない場合も多いです。
定期的に給与・役職の見直しのある正社員に比べ、昇給・昇格が確定していない契約社員とでは、同じ年数働いていても収入に差がついてきてしまうのです。
福利厚生
正社員にも契約社員にも福利厚生はありますが、内容には差があります。
法律で定めのある福利厚生(いわゆる社会保険)は正社員・契約社員に共通です。
ところが、それ以外の企業が独自で導入している福利厚生は、コストカットのため正社員限定であったり、支給額に差があったりします。
例えば、住宅購入資金や家賃の補助、家族手当(家族を持つものに支給)などは正社員限定の場合が多く、送迎バスやスポーツ施設をもつ企業もあります。
交通費や食事の補助は契約社員でも支給されることが多いですが、正社員に比べ支給額が少ないことがあります。
正社員は福利厚生が充実している企業でも、コストカット目的の契約社員は、最低限の福利厚生以外は制限されてしまうのです。
スキルアップ
長年同じ企業で働く正社員とは違い、雇用期間のある契約社員は、仕事内容が限定されているためスキルアップが難しいです。
正社員は社内研修や先輩・上司などの指導を受け、いろいろな仕事を長年にわたり経験してスキルアップしていきます。
しかし、雇用期間のある契約社員は、短期間で覚えられる簡単な仕事や、ずっと同じ内容の仕事などに限定され、設備の調整や修理など、スキルが必要な仕事は正社員が行います。
仕事内容が限定される契約社員は手を出すことはできませんので、スキルアップする機会はほぼないのです。
転勤
正社員に転勤がある企業でも、契約社員には転勤はほぼありません。
正社員は勤務地が限定されていませんので転勤がありますが、契約社員は勤務地が契約時に定められていれば転勤はありません。
正社員は支社などが各地にある場合、転勤の際にどこに配属されるかわかりませんが、契約社員は、自分の希望する勤務地で働ける仕事を選び契約します。
正社員の場合、遠く離れた勤務地であっても、転勤の辞令には従わねばなりません。家族のいる方などには大きな負担となります。
転勤に関しては、勤務地を自分で選ぶ契約社員の方が有利であると言えます。
社会的信用
正社員にくらべ、契約社員は社会的信用が低く見られます。
雇用期間がなく、安定した収入が見込める正社員とはちがい、雇用期間のある契約社員は、仕事を失い収入がなくなる可能性があり不安定だからです。
社会的信用が低いと、例えばクレジットカードを作る際の審査に落ちたり、車のローンが組めないこともあります。
住宅ローンなど、高額なものは厳しいでしょう。
また、恋人との交際や結婚においても、相手の職業や収入は重要視され、雇用や収入が不安定な場合、交際や結婚相手として敬遠されてしまうこともあります。
雇用と収入の安定は社会的信用に影響しますので、残念ながら正社員よりも雇用期間のある契約社員の方が社会的信用が低く見られてしまいます。
正社員と契約社員の共通点
正社員と契約社員では、共通なものもありますのでご紹介していきます。
正社員 | 契約社員 | |
雇用形態 | 直接雇用 | 直接雇用 |
社会保険 | あり | あり |
有給休暇 | あり | あり |
【共通なもの】
雇用形態
正社員も契約社員も、雇用主である企業とは直接雇用契約であるという点では同じですが、雇用期間の定めがないか、定めがあるかという違いがあります。
間接雇用の派遣社員で入社し、のちに直接雇用の契約社員に切り替わることもあります。
直接雇用に切り替わることで、給与アップ、ボーナスの支給、企業の福利厚生の適用などメリットが増える場合もあります。
正社員も契約社員も、企業に直接雇用されることで受けられる恩恵は多くなります。
社会保険
正社員・契約社員ともに加入でき、一定の条件を満たす企業は、強制的に加入が義務付けられています。
次の5つをまとめたものが一般的に社会保険と呼ばれます。
健康保険 | 医療費の自己負担を軽減する保険制度です |
---|---|
厚生年金保険 | 国民年金とは別の年金制度です |
雇用保険 | 労働者の生活や雇用の安定のために使われる制度です |
労災保険 | 仕事中や通勤中に生じたケガ・病気の保障制度です |
介護保険(40歳以上) | 介護が必要な方をサポートする制度です |
正社員と同じように契約社員であっても、社会保険制度は備えられています。
有給休暇
有給休暇は正社員と契約社員ともに支給されます。労働基準法により、一定の条件を満たしている労働者に対して支給されるものです。
具体的条件は次の2点です。
- 入社から6ヶ月間継続して勤務している
- その労働期間の8割以上出勤している
初年度は10日支給されます。ただし、雇用条件などにより労働日数が少ない場合、支給日数は変動します。
正社員も契約社員でも労働者であることに変わりありません。有給休暇は労働者の権利として支給されます。
契約社員から正社員になれるのか
「正社員登用制度あり」は要確認
求人票に「正社員登用制度あり」の記載がある場合は確認が必要です。
正社員登用制度ありとなっていても、正社員になれるとは限らないからです。
正社員登用の実績がほぼない場合でも、応募の少ない企業や離職率の高い企業が、人材を集めるために記載していることがあります。
また、大手企業の中には正社員登用を行っているところもありますが、希望者が多いため登用までの道のりが非常に厳しく、正社員になれるのはごくわずかです。
正社員登用制度は、法律で定めがあるわけではありません。
結局正社員になれず、時間を無駄にしたということならないように、応募する際は、実際に正社員登用の実績があるかどうかを企業に確認しましょう。
無期転換ルールの誤解に注意
契約社員の雇用安定の目的で導入された無期転換ルールですが、誤解しやすいため注意が必要です。
無期転換ルールは簡単に言えば、有期の雇用契約が5年以上更新された場合、無期の雇用契約に転換するというものです。
注意しなければならないのは、契約社員を正社員に転換するという意味ではないということです。
無期転換ルールは、契約社員が5年後には正社員になれる制度ではなく、契約社員のように雇用期間に定めがある労働者が、雇用期間の定めがない労働者になるというだけです。
無期契約になったというだけで、給与などは今までと全く同じということもありえます。
そもそも、5年以上契約が更新されるとは限りませんし、企業が無期転換ルールを避けるため、直前で契約が打ち切られる事例も実際起こっています。
無期転換ルールによって雇用の不安は軽減されますが、正社員への転換については定められていません。
正社員を目指している方は誤解のないよう注意が必要です。
遠回りせず最初から正社員を目指す
正社員登用制度も無期転換ルールも、正社員になれる保証はありませんので、契約社員から正社員になりたい方は、最初から正社員を目指しましょう。
正社員登用制度のある企業で働いていても、可能性が低いのであれば、早めに見切りをつけ転職を考えましょう。
無期転換ルールも最低で5年以上もの長い時間が必要です。途中で契約終了となるリスクもあります。
転職は若ければ若いほど有利です。
貴重な時間を無駄にしないためにも、正社員になれるかどうか分からないまま不安を抱えて働くのであれば、遠回りをせずに正社員への転職を目指しましょう。
転職はまず正社員・契約社員の違いの理解から始めましょう
正社員と契約社員には、いろいろな違いがありますので、どちらが自分にあった働き方なのかをよく考えてから選択をしましょう。
時間はあっという間に過ぎていきます。道を間違えたことに気がついた時には転職が難しくなっているかもしれません。
後悔しないためにも、必ず正社員・契約社員の違いを理解した上で転職しましょう。